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医療崩壊という言葉が新聞やテレビにもたびたび登場するようになった昨今、医療崩壊阻止や医療の信頼回復に奔走する医師たちがいる。医療崩壊を阻止するには、政治の立場からの働きかけも不可欠だ。「だから僕は梅村議員を応援する」――長尾クリニック院長・長尾和宏医師は言う。長尾医師へのインタビュー第2回は、梅村聡参議員議員との話題の共著「パンドラの箱を開こう」について伺いました。
■果たして“箱”は開かれるか
この度、また新しい本を出されましたね。
医療崩壊や医療政策について述べた『パンドラの箱を開けよう―勇気を出してこの国をチェンジ―』(発行:株式会社エピック)です。私自身にとって4冊目となる出版は、梅村聡参議院議員との共著です。梅村議員と「ちょっとマニアックだけど結構面白い本だね!」なんて言いながら、1ヶ月で書きあげました。
どのような内容の本でしょうか?
医療現場の現状や医療政策について、それぞれの持論を展開し、対談も行いました。タイトルにある「パンドラの箱」というのは、これまで誰も関わりたがらずに放置してきた、医師の労働問題などの医療崩壊の根底をなす諸問題を指しています。日々進行する医療崩壊を止めるにはどうすればいいか。そのためには敢えてこれらのややこしい“箱”を開いて解決していかなければならない…と。厚生労働行政の中枢にいる政治家の視点での医療政策本としての側面もあります。
ややこしい問題といいますと・・・
そうですね、例えば医療従事者の労働問題ですね。医師も看護師も過重労働でありながら、この数年、小泉構造改革の流れをもろに受けて診療報酬は下げられ続けてきました。これまで『医療職は聖職』というプライドもあり、医療者自身が医療現場の労働問題を持ち出す事自体、憚られたという側面がありました。それで医療従事者の過重労働が表面化することなく来た挙句、医療現場から医師が逃げ出し医療崩壊に至っています。特に産科、小児科に代表されるハイリスク現場で顕著です。それから在宅医療の問題ですね。人類史上かつて経験したことのない少子高齢化の流れの中で、介護の問題を日本国としてどう対処するかは極めて重要な課題です。一方、医療崩壊のもうひとつの原因である医師法21条も大切な視点です。これは増え続ける医療訴訟の原因であり、医療崩壊を分析する上では外せない課題です。梅村議員が医師法21条の歴史から分かり易く解説しています。
考え出すとキリがありませんね。どの問題も微妙に関わりあっていますし・・・
そうです。とにかく手をつけるべき問題は山ほどあるんですよ。本書では複雑な命題について対談形式でわかりやすく解説したり、梅村議員の国政報告会の講演抄録も載せています。梅村議員は、精力的に国政の最前線に立ち、真正面から取り組んでいます。だから私は梅村議員の後援会に名を連ね、医療現場にいるものとして政策議論に参加したいと考え行動しています。
■梅村議員を応援する理由
今まで放置されてきた諸問題…それが医療崩壊の原因でもあり、現実はそこまで切羽詰まっているという事ですね。
山積みになった問題を解決するにしてもどこから手をつければ…という状態です。どんな政治家が取り組んでも難問だと思います。例えば医師不足解決のために医師を増やすには人件費だけで現在の2倍必要です。逆に見れば、医師が抱える仕事量はそれくらいある、という裏付けでもあります。でも実際に、診療報酬を2倍にできるのか、というと…。
マスコミには「医療費が増大する」という点だけを取り上げられそうですね。
ですが、最近はマスコミにも医師不足の問題などを理解してもらえるようになり、医療訴訟に関わる仲裁機関でも医師の側に立った判断も出てくるようになってきました。医療を受けられる患者さんの間からも「最近、どうしてお医者さんの数が足りひんのやろう?」と思われるようになってきました。以前に比べると、医療崩壊が実感として世間に伝わってきているのかもしれません。
状況の改善は可能であると?
もちろん我々も、現場から絶えず発信していかなければなりません。それが現場の任務であると考えています。
だからこそ先生は、個人で大小さまざまな市民シンポジウムを開催したり、書籍を出版されているわけですね。
医者仲間の内輪だけで文句を言っているだけではなにも解決しませんからね。これらの問題を広く医療者のみならず市民に知って頂く作業を経ない限り、解決の糸口は見えてきません。そして実際には政治を通じての改革しか方法はありません。だから私は梅村議員を応援しているわけです。彼は大学病院や市民病院で臨床経験があるので、現場の実情や現場の人間の気持ちをよく理解してくれています。
■この国を“診断・治療”する
現場から発信する手段として、シンポジウムや書籍、さらにネットメディアなどがあるわけですが、他にも効果的な方法はあるでしょうか?
第1線の開業医が医学・看護教育の現場となることです。たとえば当院では看護学校生が、臨床研修の最初の段階で実習にこられて、在宅医療の現場を一緒に回っています。1年生が来るケースはアーリー・エクスポージャーと呼ばれ、できるだけ早いうちに現場を体験することでモチベーションを高めます。仕事に対する憧れや強い意欲を持って勉学に励んでもらえます。プロスポーツ選手に憧れた子供が、実際の選手に目の当たりにしたらさらに強く自分の夢を目指すのと同じですね。実は厚生官僚さんにもこのアーリー・エクスポージャーと同様、3ヶ月間位、医療現場にドップリつかって頂き、現状をしっかり観察してもらえたらな、と思っています。官僚はとても優秀で才能ある人たちですから、その経験から優れた医療政策が生まれれば、真の意味での国益となります。
高校でも、卒業して成功した先輩が母校で講演をすれば、その成功談を一生懸命に聞きますからね。
教育は大事ですよ。私は市内の夜間高校で、健康やタバコについて毎年、講義しています。梅村議員ともよく議論するんですが、学校教育に「健康」という科目があってもいいんじゃないかと。小さい時から健康や命、生と死について考える…。これって、究極の予防医学ですよ。肥満してからメタボ対策って言うよりは、ずっと効果があるでしょう(笑)
教育と医療は無関係ではないと?
健康教育は国力に直接、関係する根本課題ですよ。将来、もし医師が増えれば、学校等で健康や医療について専門に教える医師が出てきてもいいんじゃないでしょうか。
医療崩壊も広い視野で考えなければならないですね。
国民に対していきなり「医療崩壊とは!」と説明したって、なかなか理解も納得もしていただけません。だからできるだけ解りやすい言葉や例え話で解説していく…。その思いから『パンドラの箱を開けよう』を記しました。この本をきっかけに、医療再生の処方箋を国民的議論にもっていきたいですね。
長尾先生や梅村議員は広く、長期的な観点で考え、日々活動されているわけですね。
私には梅村議員は、この国を診断・治療する医師だと思いますね。僕自身は惜しみなく現場から発信し、一緒に「パンドラの箱」を開いて、たとえゆっくりでも前進することが夢ですね。一介の開業医と国会議員、お互い立場はまったく違うけど、医師としての共通の使命感を持って、我が街、そしてこの国の治療に取り組んでいきたいと思います。
Part.1 「タバコ問題の本質とは」へ
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