■医師を目指した、そもそものきっかけとは?
須磨先生が医師を目指したのはいつ頃だったんですか?
中学生くらいでしたね。大学まで一貫教育の学校だったので、通常の受験生のように大学探しに時間をとられることなく、どちらかというともっと先の将来のこと、つまり職業について考える余裕が中学生の頃からあったんです。
随分早い頃に将来を決めてらっしゃったんですね。では数ある職業の中からなぜ医師という道を選んだのですか?

周りに医者がいなかったから、特に誰かに影響されたってわけじゃないんです。
当時は高度成長期で、世の中には猛烈に働くサラリーマンというのが多くてね。それを見ていると、会社という大きな組織の中で競争しながら売上を上げていく、というスタイルがどうも自分には合わない気がして。
周りと激しく競争することなく、けれども自分自身の行いが人や社会のためになるような仕事がしたいと思った時に、「医師」という職業がたまたまぴったりはまったんです。
そうだったんですね。けれども中学生という早い時期に医師を目指してから実際に医学部へ入学するまで、医師になる決意は揺らがなかったんですか?

いや、揺らぎませんでしたね。どう考えても他に自分のイメージに合う仕事が思いつかなかったですし。それに周りに医師がいなかったおかげで、医師という仕事の大変さとか、難しさとかいったマイナスイメージを与えられることもなかったので(笑)。
だけども大人になるにつれ、どんな職業であっても困難は生じるという社会の厳しさを理解できるようにはなりますので、大学受験の頃には自分の理想だけを追い求めるのではなく、しっかり現実を見て医師という道を目指していたように思いますね。
目標がしっかりされてたんですね。外科という科目を決めたのも、中学生の頃だったんですか?
そうですね。特にその頃、外科医を主役にしたアメリカの人気ドラマにはまっていて、その外科医がすごく格好良く見えたんです。なので、私の中で「医師=外科医」というイメージしかありませんでしたね。医学部へ進学するのも、外科という科目を選ぶのも、常に一切迷いはありませんでした。
■外科医の直面する問題とは?
須磨先生の進路決定には、ドラマの影響もあったんですね。では実際外科医になってみて、外科医が直面する問題や仕事における難しさって、どんなものだとお考えですか?

「外科」という科目は他と比べて特殊だといえるかもしれません。人の体にメスを入れる、つまり人の体を傷つけるわけですから。だからこそ、患者さんやその家族との信頼関係の構築がすごく重要になってくるんです。
手術というものは成功が100%約束されているものではなく、やはり危険を伴います。手を尽くしても助けられない、あるいは症状が良くならない、ということもあるんです。手術前に患者さんやご家族ときちんと信頼関係を結んでおかないと、例えベストを尽くした手術であっても、手術の結果によっては「疑い」「不満」といった気持ちを産みかねません。
自分は最善を尽くしたつもりであっても、相手がそうは思わなかったら、それは合格点ではないんですよ。
なるほど。そういうことが昨今の「医療訴訟問題」にも繋がってくるのでしょうか。
そうですね。私たちの仕事は、物ではなく人相手だからこそ、医療技術や知識だけでなく、患者さんや家族との相互理解が非常に大切なんです。
けれども医学教育の現場では、技術や診療についての教育は行われても、幅広い人格を持った学生に「コミュニケーション」という重要な部分の教育が十分されていないのが現実ですよね。現在の訴訟問題は、医師と患者さん側とのコミュニケーション不足によるものもとても多いように感じます。
その通りかもしれませんね。では例えば須磨先生は、患者さんやご家族とのコミュニケーションをどのように図っていけばよいと思われますか?
まずは患者さんに、ご自身の病気や症状についてきちんと理解していただくことが重要ですね。特に手術前においては、病気や症状の説明と、それに対する手術の必要性、期待できること、危険性などを、患者さんやご家族がご理解し、納得されるまでしっかり対話を重ねていきます。手術のメスを入れる前に勝負は決まる、と言っても過言ではないほど、手術前のコミュニケーションと信頼関係の構築は大切なんですよ。
「コミュニケーション不足」を指摘した須磨医師。これは医療の現場だけではなく、昨今の教育の場におけるあらゆる問題の根源になっているともいえるかもしれない。次回は、近年の若手外科医減少について意見し、外科医としてのやりがいを須磨医師自ら語る。
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